
サステイナビリティ学への招待

サステイナビリティ(持続可能性)という言葉は、私たち人類の未来にとって不可欠なキーワードです。 人類の未来に対して積極的な貢献をしたいと真に願う者は、この地球上のどこにいて何をするにしても、「サステイナビリティ」を常に意識の中心に持つ必要があるでしょう。そのような状況を見据えて、世界中のさまざまな大学が「サステイナビリティ」と名がつくプログラムを創設しているのは必然と言えます。その中で、サステイナビリティ学グローバルリーダー養成大学院プログラム(GPSS-GLI)は、サステイナビリティ学のプログラムとしてはパイオニアであり、世界をリードするプログラムと言えます。 しかし、なぜサステイナビリティを日本で勉強すべきなのか不思議に思いませんか。また、このプログラムの特徴は何だろうかという疑問を持ちませんか。
日本は天然資源に乏しく、地震や津波、台風といった自然災害に頻繁に襲われてきました。また、限られた可住地域の中に1億2千万人が居住しています。私たち日本人はそのような多様で厳しい条件下で生きるために、社会の特性や構造だけではなく、人々の倫理観、生活・行動スタイルを注意深く吟味する必要がありました。「もったいない」という日本特有の表現は、ものを大切にして無駄を抑える意味を持ち、日本人が培ってきた文化をよく表現しています。残念ながら、戦後、日本社会はそのような特性を忘れ、エネルギーやものを消費する生活を謳歌してきましたが、現代のサステイナビリティに関する懸念が、日本人がその文化の中で培ってきた価値観を再度見直す必要性を呼び起こしています。日本でサステイナビリティを学ぶということは、キャンパス内で講義を受けたりセミナーに参加したりするだけではなく、サステイナブルな未来の構築ためのモデルとなりうるかもしれない多様な概念を根底に持った社会に暮らしながら未来をデザインするということなのです。 私たちが求める学生とは、日本文化の根底にある多様性を理解し、そこから未来につながる新しい理念を作り出す意思と意欲を持っている学生です。
「サステイナビリティ」が世界の未来のためのキーワードとなった今も、明確な定義は確立されていません。そして、GPSS-GLIというプログラム自体も、そのような状況のもとに設立され、設立から7年以上経つ今も、誰もが認めるような共通の教科書無しにカリキュラムを運営せざるを得ない状況が続いています。このことは、学生自身が「サステイナビリティ学」と呼ばれるこの新しい学問の発展に寄与できる余地が大いに残っていると言うことです。GPSS-GLIは、実証された枠組みやテクノロジー、もしくはサステイナビリティのツールを提供する場所ではなく、ともにサステイナビリティ学を発見し、発展させる場所です。GPSS-GLIが学生に、そして未来の学生に求めることは、サステイナビリティ学の最前線に立って、その定義や骨組みを発展させることです。追随者ではなく、世界のサステイナビリティの流れを作りだすリーダーとなれる人材を求めています。もし、確立された骨組みの中で既存のテクノロジーやツールを使ってサステイナビリティを実現したいと考えているならば、GPSS-GLIはあなたの居場所ではありません。
サステイナビリティ学とは、あなた自身が発展させるものなのです。
GPSS-GLI 創始者
東京大学東京カレッジ特任教授
工学博士 味埜 俊